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第4話 -クルマ-



 最近、若者のクルマ離れということを目にする機会が増えています。この傾向は、日本だけでなく多くの先進国、たとえばアメリカ合衆国やヨーロッパの国々(ドイツ、イタリア等)においても同様であるようです。
 もっとも、首都圏のように、電車や地下鉄、モノレールにバス・タクシーなどといった交通網の充実した地域と、移動にクルマが不可欠の地方(田舎(いなか))。あるいは、男女の間で違いがあることは否めないと思いますが。
 ともあれ、かつて私達の若いころクルマ、とくに外車は、憧(あこが)れのマトであったので、この傾向にはいささか淋しい想(おも)いがします。





司会(松山):
 そこで今回は、クルマというものに対する認識が今と昔では違ってきているのだろうか。その理由はどのあたりにあるのかを考えつつ、クルマとのつき合いかたをみてみたいと、思います。


出席者:

 北野三郎(34歳 弁護士)
 白井恵子(47歳 社長秘書)
 小泉裕一(28歳 ベトナムでラーメン店経営)
と、今回特別参加の
 遠山一郎(72歳 もとクルマ評論家)
 遠山道代(69歳 もとクルマ専門誌の編集者)
のお二人。
それに、
 MC(司会)  私・松山遼人

と、いった顔ぶれで話し合いを行ないます。

ちなみに、遠山一郎さんと道代(みちよ)さんは、クルマのとりもつ縁で一緒になられたご夫婦です。


白井:
 いま、司会者は遠山さんのご主人を“もと”クルマ評論家といわれましたが?

司会(松山):
 ええ、ご主人はもと毒舌(どくぜつ)で鳴(な)らしたすご腕の評論家だった(笑)。ですが、引退されたんです。
(そういって、遠山一郎氏の方を向いた)

遠山(主人):
 すご腕かどうかは分かりませんが、辛口(からくち)だったことはたしかでしょうね(と苦笑い)。

遠山(妻):
 その報(むく)いで体調をくずし今は隠居の身なんです(笑)。

(出席者一同声もなし)

司会(松山):
  人のからだも、アクセル(交感神経)とブレーキ(副交感神経)をベストなバランスに保つ。それが健康の極意のようですが、遠山さんは失敗しましたか?

遠山(主人):
  いやァ(といって頭をかく)。

司会(松山):
  なにはともあれ、今日はひとつよろしくお願いいたします。

さて、白井さんに伺いますが、今、どんなクルマに乗っているんですか?

白井:
 スバルのフォレスターというのです。

司会(松山):
 スバルがお好きなんですか?フォレスターというと、本格的なSUV(スポーツ用多目的車)ですが。

白井:
 主人が選んで買ったもので、私はクルマのことは主人にまかせっきりなんです。運転するのも、買い物や渋滞のときくらいのものですね。

司会(松山):
 ドライブで遠出したときはご主人が運転し、渋滞でクルマが流れないときだけハンドルを握る?

白井:
 ええ、そうなんです(笑)。

司会(松山):
 ほかのクルマを運転したことはないですか?

白井:
 トヨタのアルファードとか、ボルボも運転したことがあります。
 それと、父が丸いテールランプのスカイラインGTが好きだったんですね。それで私も独身時代には父のスカイラインに乗って、よくぶつけていました。

司会(松山):
 よくぶつけていたんですか(笑)。例えばどんなぶつけ方を?

白井:
 よそ見していて、前を走っているクルマにつっこんだり、ガードレールでこすったり・・・。

司会(松山):
 いま、元モーニング娘の若い女性が酒気帯びで人身事故を起こし、問題になっています。白井さんは、人にぶつけてしまったことはないですか?

白井:
 ラッキーなことにそれはないですね。お酒もほとんど飲まないので、酒気帯び運転もないです。

司会(松山):
 事故を起こすときって、脇を見て運転をしたり、ぼんやりしていてやっちゃうようですが・・・。

白井:
 それもありますね。あと、へんに緊張した状態でぶつけちゃうとか。

北野:
 緊張をほぐすのなら簡単ですよ。
 舌(した)を出したらいいんです(笑)。

白井:
 舌を出すんですか?

司会(松山):
 北野さんは舌を出しながら司法試験をうけて合格した(笑)?

北野:
 いや、ジョーダンではないんです。マイケル・ジョーダンという、その実績からバスケットボールの神様といわれる選手がいます。彼は勝負どころで舌を出していた。それによって、リラックス効果を生んでいたというんですね。

白井:
 事故のあとで舌を出したことはあります(笑)。
 でも、これからは事故の前に舌を出すようにします。

司会(松山):
 白井さんは、運転はするけど、クルマそのものにはあまり興味がない?

白井:
 もうしわけないですけど、まったく興味ないですね。

司会(松山):
 別にあやまらなくてもよろしいですよ(笑)。
 では、北野さんはどうでしょう。クルマはお好きですか?

北野:
 ぼくは大好きなほうですね。
 今、スバルのインプレッサスポーツ(1600CC)に乗っていますが、これを買うまでだいぶ迷いました。

司会(松山):
 意外(いがい)に硬派なんですね。で、どんな風に迷いました?

北野:
 同じスバルでもレボーグにしようか、それともマツダのアクセラスポーツにしようかと。

司会(松山):
 インプレッサスポーツに決めた理由はなんですか?

北野:
 ひとつは、このクルマが走りを追及している車種だったこと。もう一つは見た目の格好良さですね。

司会(松山):
 たしか、インプレッサは、2016年に日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞していますよね。
 で、クルマの用途は?

北野:
 ゴルフに出かけるときだとか、家内や子供を乗せて買い物に行くなどですね。

司会(松山):
 しかし、クルマをそういう風に使うなら、トヨタのワンボックスカーなど(ドアのスライドするクルマ)もいいと思うのだけど?

北野:
 たしかに箱型のクルマは室内も広いし、便利だとは思います。だけどつまらない。それにトヨタというと(売れすぎていて)大衆車という感じがして・・・。

司会(松山):
 なるほど。
 この北野さんのご意見についていかがですか。どなたか?

遠山(主人):
 いま北野さんは、「トヨタというと売れすぎていて」といいましたね。で、伺うのですが、トヨタ車っていったいどのくらい売れているかご存知ですか?

(一同首をかしげる)

遠山(主人):
 世界中で、1年間(2015年)に1000万台を生産しているんですね。日本国内で400万台、海外で600万台と。そしてその80パーセント、つまり800万台は外国人が買っている。

司会(松山):
 トヨタ本体の従業員数も、日本人より外国人のほうが多いようですね。

遠山(主人):
 そうですね。別に私は、トヨタからお金をもらっているわけではないですよ(笑)。ですが、トヨタは売上げの大半を世界市場で稼(かせ)ぎだしている。グローバル企業の典型なんですよ。意外(いがい)に日本のみなさんはこのことを知らないですが。

司会(松山):
 かつては、GM(ゼネラル・モーターズ)、フォードとかクライスラーがアメリカの国力のシンボルだった。その後クライスラーは経営不振に陥(おちい)り、現在はフィアット・クライスラーになっているけど。ところが、いまやトヨタがそれらかつてのビッグ・スリーを抜いてトップに躍(おど)りでている・・・。

遠山(主人):
 売上げでみると、2016年3月期で27兆5000億円と、日本の企業のなかで圧倒的にトップですね。

司会(松山):
 製造業では、アップル社と世界一の座をめぐってトップ争いを演じています。
しかし、どうしてトヨタはこんなに強いのでしょうか?

遠山(主人):
 ひとことでいえば、(といっても、ひとことでいえるほど簡単な問題ではないです(笑)が)トヨタにはTPD(トヨタ・プロダクツ・ディベロッピング)というシステムがあるんです。

司会(松山):
 それは、グルーバル市場において、自力で事業を生みだす組織的な仕組みといったようなものですか?

遠山(主人):
 そうですね。“主査制度”というものですが。
 ただ、この話をはじめると際限(さいげん)がないので・・・。

司会(松山):
 わかりました。それにあまりトランプさんを刺激してもいけません(笑)し、このあたりで本題に戻りましょう。
さて、小泉さん。今日はまだひとことも発していませんが、クルマに興味はありませんか?

小泉:
 ぼくはしがないラーメン屋です。だけど、クルマへの興味や夢は大いにありますよ。

司会(松山):
 そうでしたか。ぜひその夢を聴かせてくれませんか。

小泉:
 笑わないと約束してくれますか。

司会(松山):
 もちろんですよ。みなさんも約束しますよね?

(出席者一同うなずく)

小泉:
 ぼくはじつは、ポルシェが欲しいんですよ。
 それも、レーシングカーに近い“911GT3”という戦闘機みたいなやつなんですが。

遠山(主人):
 小泉さんはポルシェ911GT3の実物を見たことはあるんですか?

小泉:
 ええ、ベトナムでいちど乗せてもらったことがあります。シルバーメタリックのやつでしたが。で、一目惚(ぼ)れしてしまった。
 いつかは手に入れてやろうと、いま貯金をはじめているんですが、どうなることやら・・・。

遠山(主人):
 GT3のどんなところに魅力を感じたのかな?

小泉:
 ポルシェ独特のあの外観も好きだけど、ひときわ大きなリアウィングが格好いいですね。
それに、座ってみると、すっぽり包(つつ)みこまれるようなバケットシート。まるで(乗ったことはないけど)本物のレーシングカーに乗っているような気分でした。

遠山(主人):
 だけど、あのクルマの凄(すご)いところは、やっぱり“走り”だね。AT(オートマティック)で走るぶんには街中でもふつうに乗れる。だけど、首都高あたりでアクセルをグッと踏みこんでみなさい。ジェットコースターなんて可愛いものに思えるほどだね。

小泉:
 あのクルマは、タイヤの太さが前と後ろでちがいますよね。後ろのタイヤはやけに太くて立派だけど、どうしてですか?

遠山(主人):
 エンジンが後ろにあるためだね。つまり、リアのタイヤで3.8リットル6気筒エンジンのパワーを受けとめるためなんだ。

小泉:
 排気音も素晴らしいですよね。

遠山(主人):
 それは、おそらく運転席にあるボタンで“スポーツエグゾースト”に切り替えたためでしょう、運転者が。

北野:
 じつは、スバルのオーナーにも音にこだわる人達がいるんですね。それで、スバルでも極上のサウンドを得られる(スピーカーで音を楽しめる)限定モデルが販売されているんです。

司会(松山):
 クルマはやっぱり“走り”と“サウンド”ですかね。
 ところで、遠山(主人)さんは、どんなクルマがお好みなんですか?

 (ご主人が奥さんに「キミから話してくれ」との合図をだした)  

遠山(妻):
 この人は仕事柄もあって、それこそ車の中の王道を行くセダン。
それをはじめ、軽自動車、クーぺ、ハイブリッド車からいま主流になりつつあるSUV(スポーツ用多目的車)までいろいろと乗ってきた人なんですね。若い頃から。
ですが、やはり本当に気に入ったクルマといえば、“フェラーリ328”という1986年式のクルマですね。

司会(松山):
 ということは、30年ほど前生産されたクルマですね?

遠山(妻):
 ええ、この328はもともとはピッコロ(小さい)フェラーリとして誕生したもので、3.2ℓエンジンを積んでいます。280馬力なので(当時はともかく)今では少しものたりないですが。

司会(松山):
 そうですよね。
 最新型といえば、“フェラーリ488GTB”でしょう?

遠山(妻):
 はい。
 488GTBは、3.9ℓV8エンジンを搭載していて人気の高いクルマです。オーダーしても納車までだいぶ時間がかかるようですね。

小泉:
 フェラーリは、あの“跳(は)ね馬”のエンブレム(紋章)がいいですね。
 ぼくも一度は乗ってみたいクルマだな。

司会(松山):
 それにしても、(どうして新型の“488GTB”でなく)旧型の“328”なんですかね?

遠山(妻):
 やっぱり歳(とし)のせいでしょう(笑)。
あの最新型のダイナミックなスタイルの迫力。それに超絶した性能に気持ちがついていけなくなったんだと思いますね。

司会(松山):
 で、淡(あわ)い初恋の人“フェラーリ328”を懐かしんでいる・・・。

遠山(妻):
 昔の人は、“老(お)いてはますます壮(さかん)なるべし”といいましたでしょう?元気をださなければダメだって。 でも、主人は違うんです。

北野:
 それって、たしか後漢書(ごかんじょ)のことばでしたね(笑)。
 それにしてもご主人は、328のどこが気に入ったんですか?
 後学(こうがく)のために教えてください。

遠山(主人):
 いやぁ、“惚れてしまえばアバタもえくぼ”っていうでしょう。
 それですよ、それそれ(と、外方(そっぽ)を向く)。

遠山(妻):
 年がいもなく照(て)れているんですよ。
 この人は、以前クルマの専門誌に書いたことがあるんですよ。「“美少女的なルックス”に惚れた」って。

北野:
 フェラーリ328って、ノーズ(鼻先)がとがった直線的なフォルムをしている。だけど、それと同時に女性的でふくよかな丸みを帯(お)びてもいますよね。
その辺りがいいのかな?

司会(松山):
 北野さんは、すいぶん詳(くわ)しいようだけどフェラーリにも興味があるのかな?

(北野が笑いながらうなずく)

遠山(妻):
 あと、ルックスでいえば、ボディサイドにあるあの深くえぐられた“エアインテーク”ですね。空気を吸い込むためのものですが、主人は、「美しい鼻の穴のように表現している」と書いていましたね。

司会(松山):
 さすがに、イタリアの名門ピニンファリーナのデザインだけのことはあるな。辛口評論家の遠山さんがすっかり骨抜(ほねぬ)きにされてしまったのだから。

遠山(主人):
 ルックスだけじゃないんだ、 328の魅力は。エンジンも芸術品といっていい。
 八つのシリンダーが空気を吸いこんで爆発するが、その時交響曲を奏(かな)でる。そしてエンジェル(天使)の叫びをひびかせながらの疾走(しっそう)。その感覚に恍惚(こうこつ)となる・・・。

遠山(妻):
 主人は、フェラーリ328の“走り”と“排気音”、それにひかえ目だけど“官能的なボディ”。そのすべて(調和)に心酔(しんすい)しているのだと思いますね。ちょっと妬(や)けますが(笑)。

司会(松山):
 北野さん。それがフェラーリ328の魅力だそうですが、そういうことでいいでしょうか?

北野:
 よくわかりました。
 ただ、残念なのは、日本にはドイツのアウトバーンのような高速自動車道がない。だから、“ポルシェ911GT3”にせよ、“フェラーリ328”にせよ、そのほんとうの魅力を味わうことができない点ですね。

司会(松山):
 宝の持腐(もちぐさ)れということですかね。
 さて、フェラリーの魅力をいろいろと伺ってきました。
 だけど、いったい人はなぜいいクルマに乗りたがるのでしょうか?
 この点について、遠山(ご主人)さん。ご意見をお聴かせ願えませんか。

遠山(主人):
 だいぶ前のことだけど、私は、本田宗一郎氏と一度お会いしたことがあるんです。
 その時に彼は、こういう意味のことをいってましたね。

 “うちがどうしてレースに出るのか。それは、人っていうのはレースで勝ったクルマに乗りたがるものだからなんだ。だって、レースに勝つってことは技術がすぐれているからだろう。そのクルマを買うことによって乗り手が誇らしい気分になるのだ”と。

司会(松山):
 なるほど。
 トム・ソーヤの冒険で知られるマーク・トウェイン。彼はアメリカ近代文学の父と呼ばれた人ですが、こんなことをいっています。

“服装が人をつくる。人が丸裸(まるはだか)になったら社会での影響力などない”と。で、パーティーには白い服で行ったといいます。

小泉:
 クルマも似たようなものじゃないかな。ベントレーに乗れば誇らしい気分になるだろうし、人もスゲーなという目で見る。

司会(松山):
 そういうものでしょうかね、人間の心理って。

 さて、つぎの質問に移りたいと思います。
 遠山さんの奥さん、いまご自身はどんなクルマに乗っているんですか。

遠山(妻):
 赤いホンダのN-BOXという軽自動車です。
 以前は、フェアレデーZやミニ、アウディなどいろいろ乗りついできましたけれど・・・。

北野:
 N-BOXのあの箱のようなデザインは、白色だと商用車のように見られませんかね。

遠山(妻):
 たしかにそれはいえますね。で、白い色は避(さ)けたんです。
 だけど、このクルマは2015年度には、アクアについで日本で2番目に売れたクルマなんですよ。

北野:
 軽自動車のなかではトップでしたね。

遠山(妻):
 ええ。マイナーチェンジもありましてね、ノンターボエンジン(売られているクルマの8割がこれ)が改良されてトルクがよくなっているんです。

北野:
 街中でも乗りやすくなった、ということですかね? それで、よく売れている・・・。

遠山(妻):
 そうですね。わたしは、なんのストレスも感じないで運転しています。
 子供たちが同居していて家族が多いときですと、BMWX3のようなSUVも魅力があります。室内も広いし。でも、BMWX3はディーゼルエンジンを搭載しているけど燃費があまりよくないですね。

北野:
 リッター当りどのくらい走りますか?

遠山(妻):
 11キロほど。
 でも、今は主人と二人っきりでしょう。軽のN―BOXで十分間に合っています。

司会(松山):
 クルマ選びも、家族構成によって影響を受けますものね。
 ところで、いま、燃費が悪いという話がでましたが、じつは私、以前叱(しか)られたことがあるんですよ。ガソリンスタンドのお兄ちゃんに「ガソリンのムダ遣いだ」といって。

遠山(妻):
 どういうことですか?
 ガソリンスタンドなら、クルマの燃料(ガソリン)消費のおおいほうが儲(もう)かるのでほくほくのはずですけど。

司会(松山):
 ちょっと横道にそれます(また本筋に戻ってきます(笑))が、しばしお耳、いや目を貸してもらえますか。
 30年以上も前の話なんですが、それまで乗っていた国産車からドイツ車に買い替えたことがあるんです。

北野:
 あっ、その話まえに聞いたことがありますよ。たしか三菱ギャランシグマ(2000CC)から、ベンツに乗りかえたというんですよね?

司会(松山):
 ええ。もっともベンツといっても、280CEというコンパクトサイズの車種なんですよ。それも中古車だった。その頃まだ日本には4台しか輸入されていなくて・・・。

北野:
 たしかツードア・ハードトップというやつでしたよね。カー・グラフィックのようなクルマ専門誌で見つけた・・・。

司会(松山):
 よく憶えているなぁ。
 一目惚れだったですね。で、そのクルマを売っている目黒の外車専門店に出向いて迷うことなく購入したというわけです。

遠山(妻):
 中古車といっても、500万~600万円くらいはした筈ですよ。当時あれはまだ希少(きしょう)なクルマだったから。

司会(松山):
 500万円位だったかな。その頃いろいろと物入(ものい)りだったんだけど、借金(ローン)して買ってしまった・・・。後先(あとさき)も考えずに(笑)。

北野:
 “走り”のほうはどうでした?

司会(松山):
 その年もおし迫った12月暮れに、九州の小倉(こくら)まで飛ばした。“走り”というか、あのドライブも感動的だったなァ。

遠山(妻):
 で、ガソリンスタンドのお兄さんに叱られたというのは?

司会(松山):
 下関に近いガソリンスタンドでだったかな。ハイオクを満タンにしてもらった。と、係(かか)りのお兄さんが、東京から私が一人で乗ってきたと知って、「ガソリン代がもったいないじゃないですか」とお怒りになった(笑)。
 で、気弱な私はおもわず「つぎは金髪美人でも助手席に乗せてくるから」と謝(あやま)った。

遠山(妻):
 謝罪になっていませんね、それじゃァ(笑)。

北野:
 そのクルマでカーチェイスをやったことはないですか?

司会(松山):
 ありましたね、横浜横須賀道路(有料)で。相手はポルシェ928だったな。

小泉:
 へー、どんなだったんですか? そのカー・チェイスって。

司会(松山):
 こっちが追い越し車線を走っていると、後方からポルシェ928があおってきた。「邪魔だ、どけっ」といわんばかりに。で、すこし左に寄せたところ、猛烈ないきおいで追い越していった。

小泉:
 それで、MCも抜きかえした・・・。
 で、あとは抜きつ抜かれつですか。

司会(松山):
 まあ、そんなところですかね。

小泉:
 結局そのカーチェイスはどうなりました?

司会(松山):
 カーブを曲がった先で、相手のポルシェはパトカーに捕まっていた(笑)。こちらは、ポリスに詰問されている運転者を横目(よこめ)に眺めながら、ゆっくりとその傍(わき)をとおりすぎた・・・。

小泉:
 それが落ちですか(笑)

遠山(主人):
 ベンツ280CEは、当時、私も試乗しましたよ。

司会(松山):
 そうでしたか。で、印象はどうでした?

遠山(主人):
 外観はセダンっぽくておとなしい感じだが、車内のダッシュボードまわりはなかなだね。豪華で魅力があり、おもわず遠出をしたくなったな。

北野:
 “走り”のほうはどうでしたか?

遠山(主人):
 ある日、霞が関のインターから東名高速道に乗ったんだ。
 で、スピードをあげた。するとクルマが路面にピタッとへばりつく。安定感が抜群(ばつぐん)だったな。それにそれまで乗っていた国産車にくらべると、ひときわボディ剛性の高さを感じたね。

北野:
 サウンドのほうはどうでした?

遠山(主人):
 アクセルを踏み込むと、エンジン音が重厚だけどなんとも心地よく吼(ほ)えた。あれはたしかにいいクルマだな。

北野:
 辛口の評論家にしては、すこし甘すぎやしませんか?(笑)

 (MC(司会者)に向って)

 ところで、左ハンドルは運転しにくくありませんでしたか?

司会(松山):
 そのクルマを買うすこし前、外国でシボレー・シェベットというアメリカ車に乗っていたんですよ。2ヶ月ほど。
 だから、日本では右ハンドルのほうが対向車に近いのでかえって怖かったな。

北野:
 そんなものですか。
 いつかは私も外車に乗りかえたいと思っているんですよ。そのときは相談にのってください。

司会(松山):
 わかりました。

 さて、だいぶ時間もたってきました。このあたりで、最近の運転支援技術についてお話しを伺わせてください。
 遠山さん、いかがでしょうか?

遠山(妻):
 このところ、自動車メーカーはこぞって自動ブレーキなど安全運転装置の開発に取り組んでいますね。

司会(松山):
 今朝のテレビでも、日産自動車のとり組み状況を紹介していましたね。

遠山(妻):
 そうでしたね。ひとつは、クルマが衝突しそうになると、自動的に緊急ブレーキがはたらくというもの。それに“プロパイロット”という技術でしたか、もうひとつは。

北野:
 その番組、私も見ました。
 プロパイロットって、クルマが前のクルマとの車間距離を守り車線の中央を走るというものでしたね。

司会(松山):
 そうでした。
 プロパイロット装置さえあれば、白井さんも前のクルマとぶつかったり、ガードレールでこすったりしなくてすみますもんね(笑)。

白井:
 はい。ぜひうちのフォレスターにもつけてほしいですね。

遠山(妻):
 それにあのシステムは、前にクルマがいないと自動的に時速90㎞で走る。
 そのうち、人がハンドルを握らなくても、アクセルやブレーキを踏まなくても、安全に目的地に行けるようになるでしょうね。

白井:
 でも、なんにもしないで目的地に行けるならば、タクシーと同じになってしまわないかしら。

北野:
 そうなると、ドライブする楽しみや感動といったものもなくなってしまうと思うな。事故がなくなるのはいいことだけど。

遠山(妻):
 ほんとですね。
 でも、安全運転の自動システムが進むと困るのは、ドライバーより損害保険会社でしょうね。

司会(松山):
 事故のない時代がくる。すると、事故(損害の発生)を前提として成りたっている保険会社はいらなくなってしまう。

北野:
 すでに保険会社も、その対策を考えはじめているようですね。

司会(松山):
 どうやらそのようです。

 (ここで小泉が手をあげた)

小泉:
 ラーメン屋なんかやっていちゃポルシェは買えないかなぁ。なにか手っ取りばやい方法ってないですかねぇ。

司会(松山):
 “急がば回れ”っていいますよね。
いま大リーグで活躍中の大谷翔平選手。彼だって、エンゼルスに移る前は5年間もファイターズ(日本)で頑張(がんば)ったんだから…。

白井:
 それに“ちりも積もれば山となる”ともいいますでしょ。

小泉:
 まいったなァ。ぼくのポルシェ貯金もとうとう“ちり”になったか。

白井:
 ごめんなさいね(笑)。

司会(松山):
 さて、笑っているうちに時間がきてしまいました。
 まだまだ話したりないとは思いますが、今回のセミナーはひとまずこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。  







【まとめ】

 今回のセミナーでは、クルマをとり上げました。近頃の傾向として、若い人たちのクルマ離れを指摘する声をしばしば目にし耳にするからです。

 クルマはもともと、ある地点から他の地点に人や荷物を速く運ぶ。そのための道具です。ドラエもんのどこでもドアと同じでたいへん便利なものですね。このことを本田技研の創業者・本田宗一郎(敬称を略す)は、こういっています。

 “人類は安定した快適なスピードを手に入れることによって、自分たちの活動圏をより広くした”と。

 しかし、クルマはそもそもが高価なもの。買えば維持費もばかになりません。それにクルマ以外にも、スマホやゲームといった面白いことがいろいろある昨今です。しかも、都市部では交通網が充実している。で、マイカーを持たなくても困らないわけです。

 今日のセミナーの出席者のなかにも、クルマが身近にあれば運転をする。だけど、クルマ自体にはまったく興味がないという女性もいました。その一方で、“走り”や“格好”の良さに魅力を感じてクルマを選ぶ男性もいました。

 いや、世の中には男でも硬派の乗るようなクルマを愛してやまないうら若い乙女(おとめ)だっているわけです。それにポルシェを買うために貯金をしている若者。フェラーリの愛好家もおりました。

 セミナーのなかで、クルマ好きの男性がクルマ選びのときに、トヨタ車を除(のぞ)いた。といいました。その理由は、あまりに売れている(大衆車)ので敬遠(けいえん)したというのです。

 そして話はその流れで、トヨタがかつてビッグスリーと呼ばれたアメリカの三つの会社を抜き、世界でトップに躍りでていることに及びました。

 そのあと話題は、ポルシェ911GT3の魅力から、ピニンファリーナの手になるフェラーリ328の美少女的なルックスへ。

 もっとも、いまの日本の道路事情では、“走り”優先のポルシェやフェラーリは宝の持腐れではないだろうか、との疑問も出ましたが。

 ということで、日常の生活でホンダN―BOXのような軽自動車に乗る人びとの気持もよく分かります。事故のばあいに軽はちょっと怖いですが。

 ただ、MC(司会者)としては自分の体験からいっても、クルマにはやはり“感動”を求めたいですね。感動できるクルマを手に入れたあと、たとえその後の食事が吉野家の牛丼ばかりになったとしても。



 それにしても、人情話ならともかく、人はなぜ無機質のクルマやドライブに感動するのでしょうか?

 その答えは、本田宗一郎の言葉のなかにありました。彼は言っています。

 「クルマには、夢を実現しようとするつくり手のもつ構想とかアイデアが現れている。それはいわば魂(たましい)のようなものだ。人間とクルマとの精神的なつながりは、こうして生まれてくるのだ」と。

 “忘れえぬ感動”

 それはクルマに宿った作り手の魂と、ハンドルをにぎる者の感性とのシンパシー(共鳴)。そこから生れるものだとおもうのです。

 そして、人は何かに共鳴すればするほど、そのものの持つ“素晴らしい力”を効率よく自分の中にとり入れ、心も体もどんどん大きく豊かになっていく。

 自律神経研究の第一人者であるKスポーツドクターも

「自分が心から“感動”できるものを、出来るだけ日々の生活のな

かに取りいれる。それが超一流の人の健康法である」

と、いっています。

 ともあれ、みなさんもいつの日か自分の心から感動できるクルマに出会えるといいですね。

 それでは、これをもって第4回のセミナーを終わりたいと思います。

掲載日:平成30年10月1日




 さて、次回は「宗教」を取り上げてみたいと思います。ご期待ください。






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