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第10話 -遊び-



 自分は、仕事一筋でがんばっている。だけど、どうもうまくいかないし、日常の生活もおもしろくない、という人がいます。それに対し、成功している人ほどよく遊んでいる、ともいわれます。また、そのような上手くいっている人に限って、人生をフルに楽しんでいるとも。
 この両者のちがいは、天と地ほど。いったい、どうしてなのでしょうか?
 どうやら、それは“遊び”に関係がある。つまり、よく遊んだ人のほうが勝つということのようなのです。もし、そうだとすると、たかが遊びなんて、と、遊びをバカにしてはいられないですね。
 そういうわけで、今回(第10話)は、人生にとって遊びのもつ意味(重要性)を考えてみたいと思います。

出席者は、
 ライフスタイルのデザインをお仕事としている尾沢良子さんのほか、
 北野三郎(34歳 弁護士)
 白井恵子(47歳 社長秘書)
 安池(あんち)エリ(29歳 ブロガー)
 伊藤富美子(56歳 脳研究者の妻)
 成瀬小夜子(68歳 元IT企業社長夫人)
 それに、MC(司会)  私・松山遼人
と、いった顔ぶれで話しを進めていくことにします。



司会(松山):
 まず、“遊びとは何か”というところから入っていきましょうか。
 ふだん私たちは、なにげなく“最近遊んでる?”とか“遊びは足りている?”などといっています。とくに気分がいらついているときなど。
 ですが、あらためて遊びとはなんでしょうか、と尋ねられると、その答えは簡単にはでてこない。これはどうしてでしょうか?
 北野さん、そのあたりについてコメントをお願いできますか?

北野:
 はい。
 たしかに、これは一筋縄(ひとすじなわ)ではいかない問題ですね。私もこのセミナーのために、すこし勉強してみたんですが、正直いって遊び・・の定・・でさえすらすらといえないです。もううつ・・になりそうですよ(笑)。

白井:
 北野さんも、勉強の合間(あいま)にすこし遊びをとりいれたほうがいいと思いますよ(笑)。
 (ここで安池(あんち 以下アンチ)が手を挙げる)

アンチ:
 よろしいでしょうか。

司会(松山):
 アンチさんは、ブロガーをなりわい(生業)にしている方でしたね。
 では、どうぞ。

アンチ:
 ひと言で遊びっていいますが、その遊びの中にはいろんなもの(概念)がはいっていると思うんですね。
 それも、あいまいで矛盾したもの。例えば、“心的にリラックスした状態”が遊びの条件だという人がいるかと思えば、遊びには“緊張感”が不可欠な要件だという人もいる。
 つまり、この遊びという言葉のなかには、いろんな概念がごちゃごちゃとつめこまれていると思うんですね。

北野:
 たしかに。
 遊びという言葉は、いってみれば複合・・概念・・なんですね。しかもその概念の中には、いまアンチさんがいったように、あいまいではっきりしないもの・矛盾したものが含まれている。
 それで、これが遊びだという一般・・的な・・定義・・すら・・確立・・され・・てい・・ない・・-いや、確立・・でき・・ない・・-状態・・にあ・・んです。

アンチ:
 そのようですね。だとしたら、あまりむずかしく考えないで、とりあえずウィキュペディア流でいったらどうでしょうか。ウィキュペディアでは、『遊び(あそび)とは、知能を有する動物(ヒトを含む)が、生活的・生存上の実利の有無を問わず、心を満足させることを主たる目的として行なうもの』といっています。ひとまずこれで話を進めることにしたら…。

司会(松山):
 そうしましょうか。
 では、定義の問題はその程度にとどめて、先に進みたいと思います。
 さて、遊びというとみなさん、どんなことを考えますか?
 白井さん、どうでしょうか。

白井:
 そうですねェ。独身のころですと、自分でクルマのハンドルを握って、ドライブを楽しんだり、あちこち旅行に出かけたりしていましたね。
 結婚して子供ができると、やはりディズニーランドでしょうか。親であるわたしも一緒になって楽しんでましたね。

司会(松山):
 白井さんは、独身時代から今日まで、外でバリバリ仕事をしていますね。いまは、家庭をもちながら社長秘書をしていますが、遊びというとどんな?

白井:
 わたしは、アルコール類がダメなんですよ。残念ながら。で、もっぱら気晴らしは、学生の頃の友人たちと食事をしながらお喋りをすることくらいでしょうか。
 あっ、それと毎朝のワンチャンの散歩ですかね。

北野:
 ゴルフやテニスなんかはやらないんですか。

白井:
 友人のなかには、やっている人もいますね。テニスはきついので、バトミントンをやる人もいます。でも、わたしはジョギングもやってません(笑)。
 娘がクラッシックバレエを習っていて、ときどき発表会があり舞台で踊るんです。で、そのつき添いですとか、なにかと雑用に追われていて・・・。

成瀬:
 うちの主人は、30代半ばのころ、あるIT企業の雇(やと)われ社長をしていたんですね。でも、白井さんと同じで、あまりの忙しさに遊ぶ時間がほとんど取れなかった、とぼやいていましたね。

白井:
 仕事に追われていると、なかなかプライベート(≒遊び)の時間もとれないですものね。

司会(松山):
 たしかに、いまの時代はめまぐるしいほど世の中が動いています。で、成瀬さんのご主人が、「遊ぶ時間もとれなかった」というのもよく理解できるところではあります。
 ですが問題は、だからといって「遊ばなくてもいい」ということになるのかどうか。むしろ、遊びが必要ではないのか。
 この点について、脳科学を勉強した-そしてご主人が脳科学の研究者-の伊藤さん。
 なにかご意見はございませんか?

伊藤:
 うちの主人は、遊ぶ人ほど成功するんだよ、といつもいっていますね。それに、遊びの大事さを説いた本も何冊か出しています。

北野:
 どうして遊びが人を成功させるのでしょうか。遊びなんて時間のロスで、生存競争に負けてしまうのではないかとも思うんだけど。

伊藤:
 いえ、主人のいうのはこういうことなんですよ。
 人の脳というのは、ここ・・ちよ・・刺激・・をうけると、ベータエンドルフィン(脳内ホルモン)がどっとあふれでてくる。すると、脳が活性化して、発想が豊かになったり、新しい考えが浮かぶ。それに、情報収集やその処理能力が高まり、しかも反応が速くなる。そういうように、“快(かい)”の刺激は脳を最高の状態にもっていくようにできているのだ、と。

北野:
 ベータエンドルフィンって、どんなホルモンなんですか?

伊藤:
 快楽ホルモンともいわれ、天然アヘンによく似たもののようです。これが脳内にたくさん分泌されると、ちょうど麻薬を吸ったように気分がよくなるといわれているんですね。

北野:
 麻薬のような効果があるんですか?

伊藤:
 ええ。そういわれています。わたしは麻薬の経験はありませんけど(笑)。
 たとえば、抜歯手術の際に、痛みどめとして麻酔薬を使うじゃないですか。でも、ベータエンドルフィンが分泌されると、モルヒネの100倍以上の威力があり、まったく痛みを感じさせない。そういう驚くような実験結果も報告されているんですね。

白井:
 それに、それだけじゃなく、もよくなるんですか?

伊藤:
 ええ。
 頭が良くなるというのは、シナ・・プス・・の数・・によるんですね。脳細胞の多い少ない(数)ではなくて。
 脳のひとつの細胞から、もっとも多いと約10万ものニュ・・ーロ・・(樹のような突起)が伸びていく。すると、そのニューロン(の一つ)がほかの細胞からのびてきた他のニューロンと結びつく。この結び目をシナプスというんですが、ベータエンドルフィンによってシナプスがすごい勢いで増えていく。だから、とうぜんのこととして頭がよくなる。そういう理屈ですね。

白井:
 じゃァ、恋などもいいんですか?(笑)。

伊藤:
 もちろんですね。恋は生命力の起爆剤だといいますから、老いも若きもどんどん恋をしたらいいですよ。

北野:
 よく遊ぶことが成功にみちびく脳をつくるというのなら、私ももっと遊ぼうかな。ゴルフやドライブだけじゃなく、海外に旅行をするとか・・・。

伊藤:
 それがいいと思いますよ。
 主人のうけ売りですけど、よく遊ぶことが成功する脳をつくりあげるというのには、キチンとした科学的根拠があるというんですから。

司会(松山):
 いろんな種類・・の遊びにチャレンジするのもいいと思うんですね。だけども、成功する脳をつくるのに、遊び・・の質・・は関係してきませんか?

伊藤:
 じつは、成功するための脳をつくる要素って、二つあるんですね。
 ひとつは、いまお話しをしたベータエンドルフィンという脳内ホルモン。
 もうひとつは、ネオテニー-子どもらしさ(幼児性)-というものなんです。

白井:
 ネオ・・テニ・・ですか?

伊藤:
 ええ。
 子どもは無心(むしん)になって遊ぶじゃないですか。その無心になっているとき、じつは、ふだん(平常時)の6割増の血液が脳内に流れこんでいるんです。これはたいへんな量の血液なんですよ。

白井:
 脳にたくさんの血液がいくと、どういうメリットがあるんです?

伊藤:
 脳がさかんに思考活動を行なうというメリットがあります。

白井:
 そのネオテニーでしたっけ?
 それはどうしたら得られるのでしょうね?

伊藤:
 おとな(大人)って、知識とか常識といったものに縛(しば)られすぎているじゃないですか。
 そういうもので凝(こ)りかたまった頭。それをやわらかくときほぐすには、子どもの頃の自分を思いだすのが一番ですね。

北野:
 というと?

伊藤:
 たとえば、子どもの頃って、何を見ても聞いてもフレッシュで、「それなーに? あれなーに?」と、親を質問攻めにしたと思うんですね。わたしもそうでしたが。
 そういう好奇・・をもつことが大切なのと、もう一つは子どもの頃の想像・・をとり戻すことですね。

司会(松山):
 なるほど。
 近ごろ、世界中の電波望遠鏡をつなぎ合わせた、地球サイズの仮想的な望遠鏡(イベント・ホライゾン・テレスコープ)が、宇宙にあるといわれていたブラックホールの撮影・・に成功しています。それに、地球から約3億キロ離れた小さな惑星(わくせい)-りゅうぐう-に無人探査機はやぶさ2を着陸させて構成物質を採取した、というニュースが世の中をわかせています。そんな偉業を達成できたのも、学者の研究心のたまものですね。でも、そういった学者の研究心だって、子ども心の延長線上にあるわけですからね。

北野:
 そうですね。まさに学者の好奇心のなせるわざでしょう。
 テレビで放映されるそれらの画像を見ていても、だれより喜び興奮しているのは、当の学者のみなさんたちですものね。

司会(松山):
 さて、話がすこしずれてきたので、話題を“ベータエンドルフィンと遊びの質”の関係に戻しましょう。伊藤さん、そのあたりのコメントをお願いします。

伊藤:
 わかりました。
 結論から申しますと、子どものように無心になって遊ばないと脳は全開になりません。ですので、ワクワクし夢中になって遊ぶ。それが大事で質の良い遊び、ということになります。そうでないと、ベータエンドルフィンの分泌はあまり期待できないんですね。

白井:
 うち(会社)の社長は、部下をつれてよくゴルフに行くんですね。でも、つき合わされる部下たちにしてみれば、ゴルフも仕事のようなもの。ずいぶん気を遣っているようなんです。
 でも、それではダメでしょうね?

伊藤:
 ダメですね。
 ベータエンドルフィンは、あまり出ないでしょう。
 それに、よく営業でゴルフをやったり、飲んだりしている人がいますね。
 でも、仕事(注文)をもくろんだゴルフや飲食も、質のよい遊びとはいえません。もっとも、ゴルフはからだを動かす分だけ良いとはいえますが。

白井:
 会社の視察旅行は、どうでしょうか?

伊藤:
 あれは旅行というのは名ばかりで、じつは仕事。旅ともいえませんね。というのは、もともと心の冒険をともなうワクワしたものです。そうでないと、脳は現実に引き戻されてしまいます。

司会(松山):
 さて、ここまでは、脳が人を成功にみちびくという脳の良い面をみてきました。
 でも、脳には、人をダメにしてしまうような側面もあるようなんですね。
 で、こんどは、そのあたりを伊藤さんにうかがってみましょうか。
 (そう言って、伊藤のほうを向く)

伊藤:
 わかりました。
 3、40代の働き盛りの男性、それに2、30代の女性のなかに、いろいろとモヤモヤをかかえ嘆(なげ)いている人が見うけられます。それも少ない数ではありません。
 たとえば、「がんばっているのに、仕事で結果がだせない」とか、「これから先のビジョンが見えない」と悩んでいる人たちですね。

白井:
 あぁ、そういえば、うちの会社にもそんな人たちがいますね。
 でも、それは、どうしたことなんでしょうか?

伊藤:
 そうですね。
 そういう人たちの心の奥には、今やっていることや将来の見通しに満足感や充実感あるいは安心感がないんです。「仕事で結果が出せない」という人には、「やっている仕事に面白みがない。だから、ヤル気がおこらない」という仕事への不満があるんです。これではいい結果をだせるはずがないんですね。「これが自分の限界かと思うと、人生が虚(むな)しくなる」とぼやいている人も同じです。いまの仕事に納得できていないし、将来への漠然とした不安があるんですね。

司会(松山):
 人というのは、なにかつらいことがあっても、しっかりした目標をもっていると耐えられます。から・・だって順調に動く。それは、目標に向かって充実しているからでしょうね。
 でも、目標を見失うと、気迫もなくなりからだもダメになってしまう。

伊藤:
 おっしゃるとおりです。
 じつは主人も、きちんとした目標のない若いころ、はげしい不安感にさいなまれた時期があった、といっていました。 どうやら、「自分の人生のいくさきが、こんな程度のものなのか」と思いこんだ。それで夜もよく眠れず、不整脈にも悩まされた、というのです。

北野:
 日本では、一年間に2~3万人の人たちがみずから命を絶っている。それに若い人の死因の半分は、自殺・・ともいわれています。悩み苦しんでうつ・・になると、自死のリスクが高くなるけど、それをふせぐアイデアはないのでしょうか。

伊藤:
 主人の例でいいですか。
 (司会(松山)がうなずく)

伊藤:
 主人の体調がそれ以上悪化しないですんだのは、なんと、ヨットとの出合いだったんです。あるとき、勤務していた大学の学生に誘われて、たまたまヨット部の監督になった。そして心からヨットが好きになってしまった、というんですね。ですから、処方箋(しょほうせん)は、“心から好きになれるものとの巡(めぐ)り合い”でしょうか。

白井:
 えっ、たったそれだけのことですか?

伊藤:
 そうなんですよ。
 ヨットの楽しさ、すばらしさに完全にはまった。それだけのことです。それが主人を180度よい方向へ転換させたんですね。
 で、不眠も不整脈もきれいさっぱり消えてなくなり、容貌(ようぼう)も、日焼(ひや)けしてすっかり健康的になった。しかも、からだにはしっかりと筋肉がつき、考えかたも前向きに・・・。

司会(松山):
 伊藤さんのご主人のケースは、遊びが一人の男性を苦境の中からみごとに救った例の典型でしょうね。
 ヨットは、広い海で、しお風にふかれながら操縦することで、子どもの無邪気さをとり戻せる遊びです。海の解放感、そしてからだを動かす。脳が活性化するすべての要素をもっているのでしょうね。

伊藤:
 それに、ヨットがうまく潮にのったとき、「やったァ」と、とても感激したようなんですね。
 そういった、いわば達成・・もベータエンドルフィンの分泌にひと役買っていたんでしょうね。

司会(松山):
 なるほど。
 よく天才といわれる人には、「ふとしたときに“ひらめき”が、ポーンと天から舞いおりてくる」なんていいます。
 でも、ベータエンドルフィンがたくさん分泌されていれば、ふつうの人にだってすばらしいアイデアが、天からハシゴをつたって降りてくるかもしれませんね(笑)。

伊藤:
 そう思います(笑)。

司会(松山):
 さて、脳科学からみた遊びの効用はこの位にして、つぎに、遊びを仕事にしてしまったアンチ(安池)さんのお話をうかがってみることにしましょう。
 アンチさん、よろしくお願いします。

アンチ:
 わかりました。

司会(松山):
 アンチさんは、新卒でIT企業に勤務したのですが、あるときとつぜん脱サラをした。そして今は、ブロガーとして生計をたてている20代の女性の方です。
 そこでまず、どうして会社を辞めたのか。そのあたりのいきさつから、うかがいたいと思うのですが。

アンチ:
 わかりました。
 あれは、入社して3年目のことでした。いつもどおりにベッドの中で目を覚まし、「あぁ、会社に行く支度(したく)をしなくちゃ」 そう思ったとたんでした。なぜかとつぜん涙がどっと溢(あふ)れでて、止まらなくなったんですね。もちろん、そんなこと、それまで一度もありません。
 それで、はじめて、「自分は会社で働くのがこんなにも嫌だったんだ」と気づいたんです。

北野:
 会社での人間関係だとか、仕事の内容がアンチさんに合わなかったとか、そういうことはなかったのかな?

アンチ:
 (首をかしげる)
 上司や同僚とは、ふつうに接していました。それに仕事は営業でしたが、やさしい先輩がいろいろと教えてくれましたし・・・。
 むしろ、自分がちっとも仕事を覚えられなくて、サポートしてくれる先輩のみなさんに申しわけない気持ちでいっぱいでしたね。

白井:
 やっているお仕事に自信がもてなかったということかしら?

アンチ:
 よくわかりません。ですが、そのとき、自分はあまり仕事のできないダメな社員なのじゃないか。で、.いつか会社からレールを外(はず)されるのじゃないか。もしそうなら、その前に自分から外れて-辞めて-しまおう。そんな気持ちに追いこまれていたように思うんです。

白井:
 ほかの会社への転職は考えなかったの?

アンチ:
 もう、会社勤めは嫌でしたから・・・。

司会(松山):
 で、一人でもできるし、なによりも好きなブロガーへの道に進んだということになりますか?

アンチ:
 はい。
 でも、レールから外れるというのは、荒い海に一人で舟をこぎだすのと同じで、とても不安でしたね。
 で、その頃いろいろな分野で活躍している人のお話を聴きに行ったんです。
 たとえば、自分で会社を立ち上げた人、フリーランスで在宅で仕事をしている人、大企業で自分の意志をもってバリバリ働いている人など・・・。
 すると、みなさん、全力で楽しんで仕事をしておられたんですね。わたしは、『こんなすごい人生を送っているなんて』と軽いショックを受けたんです。
 待遇のいい安定した会社に入るのが一番いい、小さい頃からそういわれて育ちましたが、いまの時代は大企業といっても、リストラもあれば、つぶれる可能性もある。本当の安定なんてあり得ない。それに、自分で選んだ道なら、不安になっても後悔しない。仕事とプライベートを切り離さないで、全力で楽しむ。そう考えて、ブログで生きていこうと思ったんです・・・。

白井:
 アンチさんの場合は、好きなことをうまく収入の道へと結びつけるのに成功した例ですね。
 それに、独身だからできたことだと思うんですね。世帯をもって、幼児でも抱えていたらリスクが大きすぎて出来なかった、と思うんですよ。
 ラッキーなケースといえるでしょうね。

北野:
 ブログで収入を上げるには、たくさんのアクセスを得ないとダメですよね。それには目立つキャラを確立しないとならない。
 でもそのために、若い女の子が下ネタで名を売り、“ゲス”ブロガーなぞというキャラを立てるというのは、どうも感心できないですね。

白井:
 そういうブロガーも実際にいるようですね。でも、それはちょっとねぇ。

北野:
 それも問題だけど、そもそも遊びを仕事にしてしまうというのは、どんなもんだろうか?

アンチ:
 それがなにか問題でも?
 だって、好きなことをして収入を得られる-食べていける-なんて最高ではないでしょうかしら?

北野:
 いや、ゴルフだって遊びでやっているから楽しいんですよ。あれを仕事にしてしまったならば楽しいなんていってられなくなってしまうと思うんだな。負けがこんだら辛いだろうし。ゴルフとは別に、遊びが欲しくなるんじゃないだろうか。

白井:
 好きなブログをうまく仕事にするのに成功したというさきほどの“ゲス”ブロガーさんも言ってますよ。
 仕事になると、ブログを書くのも「寝不足で『仕事がつらい』というときもあったが、『これは義務・・だ』と決めて(ブログを)書きつづけたと。

北野:
 それはそうでしょうね。遊びのうちはブログが楽しくても、仕事となると、ブログだって楽しいとばかりいっていられない。書きたくないときでも、嫌でも書かざるをえないことだってあるだろうし。

司会(松山):
 では、遊びと仕事はキチンと分けたほうがいい、と思う人は挙手をお願いします。
 (出席者の過半数の人が手を挙げた)
 成瀬さん理由を聞かせてほしいんですが。

成瀬:
 人生って、短いようでけっこう長いもんですよ。
 で、やはり仕事と遊びをキチンと分けないと‐メリハリ‐をつけないと-だらけてします。
 遊ぶときは思いっきり楽しむ。そして仕事に戻ったら、やるべきことに全力を集中する。それが大事でしょうね。

司会(松山):
 どなたか、ただ今の成瀬さんに反対のご意見はありませんか?

伊藤:
 仕事も楽しんでやるのがいいのではないでしょうか。
 クルマのハンドルにだって、遊び・・が必要だといいますから。

司会(松山):
 なるほど。
 デザイナーの尾沢さん、ひとつライフスタイルのデザインをお願いします。

尾沢:
 『成功の秘訣は、自分の職業をレジャーとみなすことだ』そういったのは、マーク・トウェイン(アメリカの小説家)ではなかったでしょうか?これは、とても大切なことをいっているのだと思うんですが。

白井:
 それは、どういうことでしょうか?

尾沢:
 ええ、最高の人生をデザインするのであれば、仕事にもワクワクするような遊び・・好奇・・をとりいれよ、ということでしょうかしら。

白井:
 『遊びと好奇心を仕事にもとりいれる』んですか?

尾沢:
 はい。
 わたしは、「人生の快適さ」をデザインしてきました。これまでの人生で、仕事以外の趣味や日常生活の中から、ビジネスを成功させる人やアイデアに出会い、とても助けられてきました。
 とくに現在のようなAI(人工知能)が台頭してくる社会では、仕事の8割が人の手から失われようとしています。「そういうときの生存戦略として、『面白いと思ったことを、とりあえずやってみよう』という発想をもてるかどうかが決め・・になる」んですね。つまり、そういう発想をもてる人が生存競争に勝てるわけです。

司会(松山):
 人生の快適さというか、ライフスタイルデザインの要点はなんでしょうか。

尾沢:
 はい。それは、
 ・不要なものは排除して、好きなことをする。
 ・(表面的なカッコよさだけでなく)中味や合理性を追及する。
 ・自分の個性や強みを生かす。
 ・朝、目覚めた瞬間に、一日が楽しくなるような毎日を送る。
 ・自然や健康を大切にする。
 といったところでしょうか。
 しかし、遊び・・好奇・・で、“センス”は磨かれます。そして、損得ぬきで、心からワクワクする。そんな遊びこそが慣習から抜けだす‐新し・・い価・・値を・・つく・・り出・・-きっかけをつくってくれるわけです。
 で、真剣に遊ぶ人ほどクリエイティビティー(創造力)も磨かれて人生が上手くいくのです。

司会(松山):
 要するに、大いに遊ぶことによりワクワクの種を植えていく。その種が育つにしたがい、良いアイディアやセンスが自分のものになる。しかも、仕事の範囲を広げたり、人脈を広げたり、と“好き”がどんどん仕事になっていく・・・。

白井:
 遊びって、良いことずくめなんですね。

司会(松山):
 遊びは良いことずくめだし、仕事にも遊びが必要ということですが、それは仕事の種類によってもすこし違ってくると思いますね。
 北野さん、その点はどうでしょうか。

北野:
 デザインの仕事などには、遊びの要素が必要というのはわかります。
 ですが、私たちの仕事でいうと、死刑になるかどうかという人を弁護するときに、遊びをとりいれるというのはちょっと違和感がありますね。

司会(松山):
 生存が危ぶまれるといった患者さんを手術するお医者さんが、ワクワクした遊び心で手術をされても、ちょっと心配ですしねぇ。
 やはり、遊びが大事とはいっても、仕事の性質、それも時と場合によって異なる、ということになるのでしょうね。

北野:
 そう思いますね。

司会(松山):
 さて、まだ話し足りない気がしますが、残念ながら予定の時間がきてしまいました。
 本日はどうもありがとうございました。







【まとめ】

 今回(第10回)は、“遊び”をテーマに取り上げてみました。それは、『遊んでいないで勉強しろ!』とか『真面目に働け!』などと、とかく悪者扱いされやすい“遊び”。それが、じつは人生における成功・・にとって欠かせないほど重要なものであると昨今いわれているからにほかなりません。それも、その道の専門家や成功者によって・・・。
 セミナーでは、まず遊びを定義することの難しさから入り、遊びの(何がそんなに良いのかといった)効用を、脳科学者や企業トップの奥さん、あるいはライフスタイルのデザインを生業(なりわい)としている方々に意見を披露してもらいながら、座談会(架空)のスタイルをとって多角的に論じてみた次第です。
 遊びは、脳科学的にみると、ベーターエンドルフィン(脳内ホルモン)の分泌を促がし、脳のやわらかい働き≒ネオテニー(幼児性)をもたらす。このベーターエンドルフィンとネオテニーの二つが、脳を活性化させ、人を成功にみちびく脳をつくるというわけなのですね。
 また、トップ事業家の目からみると、現代は“遊んでいた人の時代”だといいます。
 たしかに、“働くこと”、“勉強すること”は、豊かな人生を送るのに必要である。
 しかし、それだけでなく、ほかにやることがあるのではないか?
 それに対する答えが遊びだ、と企業の元トップはいいます。
 とはいっても、飲む(酒)、打つ(博打(ばくち))、買う(女)といった、昭和のおじさんの遊びのことではない。もっと、子ど・・もじ・・みた・・遊び・・なのだと・・・・。
 寝食を忘れ、時間のたつのを忘れて、自分の世界にのめり込む遊びのことなのだと・・・。
 ちなみに、天才といわれたあのアップルのスティーブ・ジョブスも子どものような人だったといわれています。
   子ども・・・、遊び・・・、遊びといえば、
 かつて、SFを読むのは遊びだった。電気自動車で知られるイーロンマスク、フェイスブックのマーク・ザラガーバンク、マイクロ・ソフトのビルゲイツも、みんな若いころSFを読んでいた。そこでくり広げられる物語に胸を躍らせながら、妄想を高め、その作品に描かれた世界を自分の力で実現したい。そう考えたのではないだろうか、といわれています。
 教科書・参考書ばかりを読んでいた子どもはおそらく真面目で、しっかりしていて、礼儀正しい大人になっているだろう。が、ダイソンの掃除機、バルミューダのトースターのような、奇想天外な、しかも素晴しい製品を造ろうと考えたりはしない…。
 やはり、今の時代は、“遊んでいた人”の時代。それも子どもっぽい遊びを大事にしてきた人の時代、だといわれます。

 太古の昔からある疑問に、こういうのがあります。
 『人間は、何のために生きているか?』
 さまざまな哲学者が、その答えを模索してきた。しかし、IT企業のトップはいいます。その答は『遊びに尽きる』と思う、と。
 つまり、人は遊ぶために生まれてきた。だから、人はいくつになっても遊びたいのだ、と。地方の人びとは、ライフの部分を楽しんでいる人が多い。つまり、いなか(地方)で、平日も週末もしっかり遊んでいる人は、人間の本能に素直に生きているということ。問題は、都市部で忙しく働いている人。彼らは、定年退職したら、ツケをとり戻そうとしているのかもしれない。
 しかし、それではだめ。何をしたらいいのかわからなくなってしまうのだと、いう。
 そこで『今から、退職後もつづけられる遊び・趣味を見つけておくべき。』だというのです。
 この言葉を聞くと、司会者の私は、ずっと以前にある信用金の創業者(故人)から伺った言葉を想い出します。それは、その方が定年退職をされて、一年ほどたった頃ご自宅を訪問したときに伺ったものですが、「自分は、これ(定年)まで仕事のことしか考えずに過ごしてきた。定年を迎えた今なにをやったらいいのかわからない。やることがないんですよ。だから、つまらない。働いているときから、なにか趣味をもっておくべきですよ。そうしないさいよ。」
 まして、これからの時代は、“遊んでいる人の時代”。急いで資格をとったり、勉強会に参加するのではなく、ゆっくりと、脇目を振りまくりながら“遊び”にとり組むべし。すると、派生的に面白そうな遊びが見つかる。(その結果)成長の余地が、ひとりでに広がっていく・・・。

掲載日:平成31年6月5日




 というわけで、今回はここまでとしますが、次回は結婚をとり上げてみたいと思います。どうぞご期待ください。




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